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 更新日:2023年04月25日

米国で一番有名なワイナリーのある、カリフォルニア州ナパ・ソノマ地区を世界的に有名にしたのが

日本人だったことをご存じでしょうか?

この本の主人公である長沢鼎(ながさわかなえ 本名:磯永彦輔)は、幼少期に薩摩藩英国留学生として英国に渡り、

スコットランドのトーマス・グラバーの本家(長崎のグラバー邸の主)に身を置き、現地高校を首席で卒業、

その後、同英国留学生有志たちと米国に渡り、ハリスが主宰するニューヨーク州ブロクトンのキリスト教系新興

宗教団体「新生兄弟社(Brotherhood of the New Life)」に入り、信者らと共同生活を送る。特に、この共同

生活の糧としてキリストの血液と称するワイン造りに力を入れることとなり、その後、ワイン栽培に適したカリ

フォルニアのソノマ地区に教団ごと移住、本格的なワイン栽培を手がけ、その努力と品質から世界中で

ナガサワ・ワイナリーを通してカリフォルニア・ワインが有名となった。

しかしながら、その後の禁酒法、排日法案、日系人移民収容などにより、ナガサワ・ワイナリーは歴史から

姿を消すこととなった。

その後、彼の志を受け、同じ場所では、パラダイスリッジ・ワイナリーがワイン製造にを手がけると共に、

長沢の功績をたたえる博物館が同地に併設されていたが、しかしながら2017年10月のソノマ地区の大火災で

同ワイナリーと博物館も全焼してしまった(詳しくはこちらhttps://globe.asahi.com/article/11846555)。

しばらく、長沢の功績は忘れ去られていたところ、レーガン大統領時代に排日法案に対する賠償を認める法案が

可決、また同大統領来日時に国会演説の際に「ブドウ王・ナガサワ」の功績をたたえる演説し、以降ナガサワの

功績が様々な方面から顧みられることとなった。

何気なく口にするカルフォルニア・ワイン、そんなワインに一人の薩摩隼人の並々なならぬ努力があったこと、

たった一人の日本人がその後の米国日系人の活躍の礎を築いたことを忘れてはいけない、

そんな事を築かせてくれた貴重な一冊といえよう。